価格へのこだわりのページでも書いていますが、どんなジュエリーを持っていて、どの場面でどうそれをつけるか、という場面とジュエリーを選ぶバランス感覚がとても大事だと考えています。
同時に、使っている石と、貴金属の品位(純度)、デザインのバランスは、ジュエリーそのものの品質を左右するぐらい、とても大切なんです。
例えば、ジュエリーと呼べるものには、長く身に付ける前提で、このパーツは強度上これ以上薄くてはいけない、という暗黙の了解、暗黙の常識があります。
またそれとは別の視点で、この部分にこのデザインで、これは余分な厚みである、というデザインコンセプトやデザイン品質上、余分な厚み、もっさりとした印象を与え、品格を下げる罪でしかない厚み、というのもあります。
強度上必要な厚みでなくて、デザイン上余分であれば、地金を単に余分に使うことになってしまい、イコールそのまま価格に地金の重みとして加算されてしまいますので、本当に単なる無駄になってしまうんですね。
例外、別の価値観として、中国などでは、デザインより財産として重みを重視しますので、中国ではいいジュエリーということになります。
話が戻って、厚みや幅、高さなどデザインの品質を左右する寸法について、部分と部分の比率のバランス感覚も大切です。
本体に重量感があるのに、パーツが貧弱だとしたら、強度やつけやすさを無視していることになり、品質のいいジュエリーとは考えられません。
また、別の視点で、選ぶ石がすごくいいのに、作りが粗雑なジュエリーだと、なんとも言えずアンバランスで、知性を感じない、品格も格も損ねたジュエリーになってしまいます。
こういう場合は、石がいいだけに、本当に残念な感じが際立ってしまいます。
ただ、そういうことを考慮したジュエリーにリメイクできるのが、宝石の良いところでもありますが(笑)
これとは逆に、石がそれほど品質が良くないのに、貴金属を使った作りがものすごくいいジュエリーというのも、アンバランスと言えばアンバランスです。
たとえば、それが、お祖父様がお金のない頃に、コツコツと貯めたお金でお祖母様に送った心のこもったジュエリーを譲り受けられた娘さん、お孫さんのリメイクジュエリーだとしたらどうでしょう。
逆にそのアンバランスさに、その貴重な物語が込められているのをほのかに感じさせる、奥深い魅力のあるジュエリーになります。
思い入れのある石を大切にいいジュエリーに仕立てた、特別なジュエリーなんだ、そういう大切な人たちがいて、そういう想いを大切にする人なんだ、と、身に付けているだけで、無言のうちに多くのことが伝わるんですね。
こんな風に、ジュエリーは、そのひとつの品の中の、パーツの厚みや高さののバランス、石の品質と作りの品質のバランスで、とても多くのことを物語ります。
判る人には一目見た瞬間に判ってしまう、とても雄弁な面があるのが、ジュエリーなのです。
作り手としては気が抜けないですが、とても魅力が多いのも、ジュエリーの良さだな、と思います。